北上山地の豊かな生活
 1999年7月9日夜のNHKテレビの「ドキュメントにっぽん−小さな詩人たち・北上山地20人の教室」をみた。ここ数年のNHKテレビは優れた作品を提供しているが、その中でも秀作のひとつである。
 東北・北上山地の木細工小学校20人の生活の記録である。そこでみた生活は物質的に豊かな生活ではないが、何ともいえない「豊かな生活」だった。子供たちは毎日身近に起こった出来事を作文に書いて行く。
 それは全て自分のみたもの、感じたことであり、その作文を細かく指導している先生がいる。それを大声で発表する子供たちの顔は元気いっぱい。何かに怯えて小さい声でしか話せない都会の子供たちや私たちとは大違い。上級生は下級生の面倒をみることが当然であり、登校のときも下級生を間に挟んで登校する上級生たち。さまざまな農作業や弟妹の世話をまかされて育つ子供たち。
 そんな生活を支える豊かな自然とその自然とのつきあい方を教える大人たち。4世代同居も珍しくない家庭で、昔のことを自然に知ることのできる子供たち。そんな豊かな子供たちの生活を支えるように、子供たちの文集は各家庭に配られていく。そして、子供たちみんなの顔を知ってはぐくんでいる大人たち。
 豊かさとはこんな生活のことを言うのであろう。ただただ、まだ日本にそんな生活を送るよう努力しているところがあるんだ、と伝えたかっただけである。私もかってはこんな環境で育ったような気がする。でもいまは、その延長線上で生活してはいない。