(「ネッター解剖学アトラス」、Frank H. Netter著、原書第三版、相磯貞和訳から引用)
この図は、右脚の後面の下腿三頭筋を中心に描いたもので、右側は左側に見える緋腹筋(右と左の頭をもつ)をふくらはぎの真ん中あたりで切断したもので、その下にあるヒラメ筋が見える。なお、白く見えるのは緋腹筋、ヒラメ筋が腱となって踵の骨につながるところであり、膝裏にも同様の腱が見える。拡大可能です。
この図は、右脚の後面で足首の底屈(屈曲)(足先をしたに向ける)に関与する下腿三頭筋などの浅い筋(A)と深層筋を描いたものである。左側は踵の骨に結合している下腿三頭筋で踵とを引き上げることで、また右側の筋は今回の記事では議論の対象にはなっていないが、主として足指の底に結合してそれを引くことで足先を下げる(底屈)ように働く。蹴り出しにはこれらの筋群が協同して働くと思われる。
左図では、右脚前面の前脛骨筋などを描いたもので、前脛骨筋が脛骨の前を横切って足の内側から足底に回り込んでいることが理解できる。右図は右脚外側の腓骨筋群を右側面から見たものであり、腓骨筋が足の外側から足底に回り込んでいることがよく理解できる。(「第1解剖講義ノート」、寺島俊雄著、神戸生協から引用)

小山田さま

> 屈曲=背屈、伸展=底屈 の解剖書とこの逆の解剖書があります。
> 寺島先生の場合は後者のようです。

 失礼しました。そんなんがあるんだ!でも、前者の方が感覚的には分かりやすいですけどね。

> 腓骨筋は基本的に足関節の伸展(底屈)です。
> 外反筋というより他の筋と共同で外反の作用を行います。
> ここですが、着地時の外反は外反筋の動きではなく股関節からのあおりだと
> 思います。

 もう一度確認、この場合の伸展(底屈)は足先を下に下げることですね。「着地時の外反は外反筋の動きではなく股関節からのあおりだと思います」のところですが、ここで言う「着地時」というのは「正常な着地時」ですね? でも、正常でない私の場合には、余計な外反が進行し、ふくらはぎの内側のテンションで補う必要が出てくる、ということですね?

> 中西さんは確実に蹴りすぎていると思います。

 正直なところ、蹴っている意識は全くなく、この十年近い議論もあって「蹴る」ことは極力避けてきました。本当に蹴っているのか、あるいは、今回の議論にあるように「余計な外反」が発生しているのか、と悩んではいます。10/05

中西さま

>  もう一度確認、この場合の伸展(底屈)は足先を下に下げることですね。
> 「着地時の外反は外反筋の動きではなく股関節からのあおりだと思います」の
> ところですが、ここで言う「着地時」というのは「正常な着地時」ですね? 
> でも、正常でない私の場合には、余計な外反が進行し、ふくらはぎの内側のテ
> ンションで補う必要が出てくる、ということですね?

 そのとおりです。わたしは、治療時に補正させている筋の張りでどのような力を加えておられるか判断しております。

>  正直なところ、蹴っている意識は全くなく、この十年近い議論もあって「蹴
> る」ことは極力避けてきました。本当に蹴っているのか、あるいは、今回の議
> 論にあるように「余計な外反」が発生しているのか、と悩んではいます。

 そうなんですよ!意識が無いのが曲者なんですよ。
特に足首を固定と考えた場合、屈曲よりも外反の方が努力感があります。そのため、屈曲と外反が勘違いされることが非常に多いんです。内反・屈曲・外反について資料を添付いたします(前ページの図)。ここで大きな決め手となるのが「前脛骨筋」です。10/ 06


小山田さま

> そうなんですよ!
> 意識が無いのが曲者なんですよ。
> 特に足首を固定と考え場合、屈曲よりも外反の方が努力感があります。
> そのため、屈曲と外反が勘違いされることが非常に多いんです。
> 内反・屈曲・外反について資料を添付いたします。
> ここで大きな決め手となるのが「前脛骨筋」です。

 最後の難関、このところが分かりにくいんです。ここの文章の中で「そのため、屈曲(足先をしたに下げる)と外反が勘違いされる」と言うところが分からない。どう勘違いされるのか。
 また、「ここで大きな決め手となるのが『前頸骨筋』です』という下りも分かりません。前頸骨筋が足の内側から回り込んでいるために内反に関係していることは良く分かるのですが、『決め手』と書いてあるわけが理解できないんです。よろしくお願いいたします。10/06

中西さま

 前脛骨筋は足関節屈曲の主導筋です。この前脛骨筋は、外反のときには作用しません。その外側にある腓骨筋が作用します。より強い屈曲を求めてしまうと意識外で外反位にしてしまいます。この方が強く足首を屈曲位で固定できると勘違いしてしまいます。1 0/06

小山田さま

 ここでひとつ勘違いですね。小山田さんの頭と私の頭で違います。小山田さんの言う「屈曲」は私の「背屈」(伸展)ですね。

 それと先ほどのメールの全体は、私が「蹴ろう」と思っていないのに「蹴った」ような筋の状態になっていることを説明しようとして小山田さんが持ち出された話だと思うのですよね。そうすると、着地時に、反力を受けようとして強く地面を押そうと意識(より強い屈曲を求めることにつながる?)すると、それは長腓骨筋を動かすことにつながる、という言い分ですね。そうだとすると何故と考えるのですが、前頸骨筋は深腓骨神経、長腓骨筋は浅腓骨神経支配となっていて一応違うんです。違うけど仲間ですね。これが原因ですか? なんかこの話は難しい話で、「関連痛」のような話になってきました。10/06

中西さま

>  先ほどの資料を見ていて、「そうか、第三腓骨筋が共通なんだ」と分かった
> と思った瞬間、「でも、前頸骨筋も共通ではないか。じゃ、バランスがとれて
> もおかしくはない」と思ってしまいました。

 前脛骨筋は外反では作用しません。屈曲(背屈)と外反は別物で、外反には伸展(底屈)の要素が含まれていると言いたいのです。10/06

小山田さま

 資料でも明らかですが、確かに、前脛骨筋は内反には関係ありですね。

> 屈曲(背屈)と外反は別物で、外反には伸展(底屈)の要素が含まれている
> と言いたいのです。

 ということは、底屈、つまりは踏みつけ(あるいは蹴りだし)操作は外反を
も引き起こすということをおっしゃりたいのですね?10/06

中西さま

 いや、外反が蹴り出しを引き起こすと言いたいのです。10/06

小山田さま

 あぁ、内転筋で右脚を引っ張って着地する傾向が強いときには、足の右側からの着地が強いためにそれを避けようとして外反する。そのとき、長腓骨筋は底屈(伸展)をも引き起こすためにそれに連動して腓腹筋・ヒラメ筋も緊張して強い蹴りだしと同様の動きをする。それが続くことによって下腿筋に強い緊張が発生する。

 一方、外反に対する代償として内反も生じ、前頸骨筋の緊張、また腓腹筋などの内側部分に強い緊張も発生する。そのようなことでふくらはぎの下腿三頭筋にアンバランスが発生し、それが痛みの元となる。この理解で完璧? これが正しい理解だとすると、すご〜くよく分かった感じがします。10/06

中西さま

 やっと答えが出ました。おつかれさまでした。10/06

小山田さま

 本当にありがとうございました。よく分かりました。本当はまだわかりにくいところがありますが、それはまた。それにしても、議論の難しさ、議論の大事さ、コミュニケーションのありがたさを感じました。10/06
右ふくらはぎ痛についての総括
 夏真っ盛りのお盆明けから痛めた右ふくらはぎ痛の原因は上の議論の最後に出ている次の言葉に尽きる。

 「あぁ、内転筋で右脚を引っ張って着地する傾向が強いときには、足の右側からの着地が強いためにそれを避けようとして外反する。そのとき、長腓骨筋は底屈(伸展)をも引き起こすためにそれに連動して腓腹筋・ヒラメ筋も緊張して強い蹴りだしと同様の動きをする。それが続くことによって下腿筋に強い緊張が発生する。
 一方、外反に対する代償として内反も生じ、前頸骨筋の緊張、また腓腹筋などの内側部分に強い緊張も発生する。そのようなことでふくらはぎの下腿三頭筋にアンバランスが発生し、それが痛みの元となる。」

 ただ、細かく言えば、上の図にあるようにふくらはぎの痛みは深層筋にも関連し、細部にわたっては私には不明である。本当のことを言うと、ふくらはぎの痛みというのは、どのあたりがどの深さのところが痛いのかを特定することは全く難しい。

 そして、その痛み解消については、着地の際に右足踵の内側を意識することで両脚の間隔である“歩隔”を少しでも拡げ、余計な外反を防ぐことが基本となった。この走法はいわゆる「二直線走法」であり、股関節幅での二軸を意識して走ることである。
(なお、この走法については、http://www.namiashi.net/ をご覧下さい。)
 私たちは、小さいときから速く走ろうとすると一本の中心軸に沿って脚(足)を出し、手を振るときには手のひらを内側に立てて走るように教えられてきた感覚が私にはある。しかし、この二直線走法、つまり歩隔を拡げて走ろうと意識すると不思議なことに手のひらを下にして、それを外に向けようとして走っている自分に気が付く。

 また面白いことに、そのような走り方を心がけていると、不思議に股関節の柔軟性に変化が出てくる。そのようなことを感じていると、人の身体の繊細さと不思議さを感じざるを得ない。                       (2009年10月8日)