図1.ランニングと食事制限による減量効果(kg)
 いまから12年前、丁度そのようなことが問題になり始める50歳の年に名古屋から大阪に転勤した私にとって、体調管理の必要性が現実化したのは当然であった。しかも転勤が単身赴任という形をとり、偏った食事内容と食べ過ぎになりがちだったのは後から考えてみれば最悪だったのかもしれない。おまけに名古屋時代には毎週かなり厳しくやっていた草野球からも離れ、体重増の原因はことごとく整っていた。
(1)はじめての減量
 大阪に来て3年が過ぎ、徐々に増えていた体重が78キロを突破しそうになってくると階段を上るのも少々辛くなる時期を迎えていた。そこで、夏休みを控えて思い切って減量に挑戦することにした。やり方のポイントは二つ。ひとつは食事制限で、ご飯は茶碗一杯、そのかわり野菜サラダ(実際には、タマネギのスライスを水にさらした後に鰹節としょうゆで沢山食べた)を沢山食べる、肉はできるだけ魚にする、というものだった。ふたつ目は、ジョギングを取り入れることにした。野球をやるために走ることは仕方がないが、という程度にしか走ることには興味がなかった私としては、それは方針の大転換であった。そのためには、できるだけ早く自宅に帰り、暗くなる前に走るということに決めた。
 当初10分も走れば結構疲れていたが、慣れてくればゆっくりと30分くらいは走れるようになり、食事制限と相まって体重の減少は目に見えて大きくなってきた(図1)。そうなると正直なもので、走ることが面白くなり、その後市民ランナーとして走り続けることになったのである。それはともかく、順調に続いていた減量が止まったのはおよそ1ヶ月半後で、そこから1ヶ月間はほとんど減量できない日々が続いていた。
 減量できないということは、カロリーの出入りのバランスがとれていることを意味しており、それを少しでも崩せば減量できると考えるのは普通である。そこで思い切って5kg2個による「ダンベル体操」を寝る前にはじめたところ、あっという間に再び減量がはじまったのである。この体操は主として上半身についてのもので、この結果は体重が減るか減らないかはちょっとしたバランスの問題であると感じた。つまり、ちょっとした上半身での筋肉量の増加が基礎代謝量を上げ、減量に結びついたのであろう。
 結局、約3ヶ月で8キロ近い減量となり、減量の目的を完全に達成した。その間、美味しいものを食べ、美味しいものを飲めば直ぐに体重に跳ね返ることを痛切に感じたものである。
(2)長距離走と筋肉トレーニング
図2.レース別ハーフマラソン記録
図3.筋トレと禁煙と体重変動
 一方、図4の最高血圧(最大血圧)、最低血圧(最小血圧)は筋トレの当初から少しずつ下がり始め、もともと相対的には低い血圧がジリジリと下降しつつあった。その中でも最低血圧の下がりが相対的に大きく、最高血圧と最低血圧の差が大きくなってきている。この範囲の血圧は文献によれば「至適血圧」であり、循環器機能の改善が図られたと考えて良いであろう。 体脂肪率は、2000年の夏以降急激に上がってそこで安定しているが、それが測定器の問題であるのか私の体質の問題であるのかは不明である(図5)。なお、この測定は両腕で測定する簡易型で、私の場合体重計のようなもので測定する値より5%くらい高く出る傾向があるようである。それにしてももう少し下げなければいけないと痛感している。
図4.筋トレと禁煙と血圧
 あとで述べる禁煙との関係で最も面白いのは心拍数である(図6)。もともと相対的には低い心拍数の私の場合でも、筋トレ開始時点のおよそ70平均から2001年の夏頃には60くらいまで約15%ほどもトレーニングで減少してきた。低い心拍数で十分なガス交換ができることは心臓への負担を大きく減らし、長距離を効率的に走る上で必要なことであるが、2年間の筋トレなどによって心肺機能が大幅に改善されたと考えて良いであろう。
図5.筋トレと禁煙と体脂肪率
(3)禁煙と体質改善
 2001年の秋、なぜかにわかにある種の禁煙ガムの宣伝がテレビをにぎわし始め、それを見た私の好奇心が騒ぎ始めた。そのメーカーは私のような仕事をしていると良く知っている外国の有名な会社だったこともあった。どんなものなのか近くのドラッグストアーで見ようとしたがなかなか見つけられず、やむなく店員に探してもらって説明されているうちに引っ込みがつかなくなってしまった。かなり高価なものであったが、逃げ出すわけにゆかなくなったのである。幸い女房も名古屋の自宅に戻っていて、1週間くらい不在の時で、禁煙に失敗しても分からない、そんなうまい条件が揃っていたのである。
図6.筋トレと禁煙と心拍数
 次の朝、いつものように食事をしてタバコを吸ってから車で出掛け、大学ではガムを2つくらい噛んでいつものように過ごしたが特になんの禁断症状もなかった。勿論、そんなに早く禁断症状など現れるはずもない。が、タバコのことを忘れられるように、帰宅途中いつものように車でジムに立ち寄ることにした。そこでいつものように血圧、体重そして心拍数の測定を行い、心拍数の数字”52”を見てあっと驚いたのである。タバコを吸わなくなってまだ10時間ほどしか経っていないのに・・・、抹消血管を収縮させるとよくいわれるタバコだけのことはある、と痛く感激した。
図7.禁煙前後の心拍数の変動(拡大図)
 禁煙による血圧の変化としては、それほど大きくはないが最低血圧がさらに低下し、最高と最低の差がさらに拡大しつつあるように見える(図4)。また、体脂肪率も含めてデータのばらつきが少なくなっており、体調の安定化が起こっていることを想像させる(図5)。体重は少し異なる動きをしている。禁煙直後から体重の増加が顕著である(図3)。これは、禁煙の生理的影響が筋肉量に跳ね返っていることと、口が淋しいために少し間食が多くなることによる可能性があるように思えるが、どれが主原因かは不明である。かなり厳しいトレーニングをしてもこの増加分を除去するのは難物であり、食事制限しかないかもしれない。
(4)禁煙のマラソンへの影響は?
 皆さんはいかが思われますか?
(2002年3月19日)