真面目に生きていても人々を袋小路に追い詰めてゆくこの時代ー三菱自動車事件に思う
- 2016/05/20 11:20

そんなことがあれば消費者はバカではないからあっという間に売り上げは半減したとは2枚目の写真の記事にある。そんなことをやればそうなることが分かっていてもやめられないのである。興味深いことに、その不正の指摘は提携相手の日産自動車からであったこともまた注目に値する(注)。VWの不正に至ってはことは最初から世界規模であるから、バレればそれによる損害は馬鹿デカいものになることは初めからわかっていたはずである。が、それでもやめられないのである。

さらに、地盤改良工事の東亜建設工業が羽田、松山、福岡空港で行った液状化防止のための工事で、地盤に注入する薬液が必要量の5-52%しかなかったことが判明し、工事が偽装されていたことも判明している。おっとまだあった。東洋ゴムによる免震装置の能力偽装、そしてなんと東芝の会計の不正偽装工作まであった。
以上書いてきたようなあってはならない不正行為はどうして引き起こされるのだろうか。そんな不正行為をやってしまうのはしょせん組織の中の個人である。不正であることが分かっていてもそこから逃れられないのは、組織内の個人として大きな圧力に曝されているからだと思われる。しかし同時に、各個人は後で述べるような『あなた買います』そして『わたし売ります』の対象であることが最大の問題である。

そんな組織の圧力下で個人が自分の立場を守るのは大変困難であるが、それをさらに難しくしているのは、この現在の体制の中での個人の立場の問題であろう。そんな時代の到来を象徴的に示したのが昭和30年にプロ野球の選手勧誘問題で起き、のちに小説になり映画化もされた(『あなた買います』1956年、小野稔著)「穴吹事件」である。当時立教大学4年であった穴吹義雄氏の各球団による争奪戦は激しく、結局南海ホークスに入団したが当時としては破格の700万円の契約金だったという(玉木正之氏コラム、http://www.tamakimasayuki.com/sport/bn_33.htm )。

このようなカネまみれの構造における個人は、資本主義体制のさらなるグローバル化による強化、新たに金融がインターネットによって時空を超えて一瞬に展開される時代になってますます過酷な競争下に置かれるようになった(『資本主義の終焉と歴史の危機』2014、水野和夫・著を参考にした)。そして、当然のように世界中で起こっている格差の拡大を背景に各個人は『あなた買います』から、『わたし売ります』の市場にさらされることになってしまった。つまりは、誰しもが自分を過度に彩り過度に見せびらかして価値ある「商品」として売りに出さなければならなくなったのである。その結果ときには自分を偽り、他人を欺くこともやむを得ないこととなりかねない。いまの世の中では、私を含めあらゆる人々がこの難しい状況の中に置かれているのである。だから、あらゆるレベル、あらゆる業界での不正はいつ起こっても不思議はないしいつも起こっているのであろう。私がいまだ未解決と思うSTAP細胞の展開、発表方法そして後処理の問題は、所詮私たちみんなが抱えるこのような難題の延長線上にあり、他人事でないことは確かである(http://www.unique-runner.com/blog/index.php/view/219)。
注: この三菱自動車の不正が発覚して1か月もたたない今月13日、三菱自動車は日産の傘下に入ることが電光石火決定され、報道された(4枚目の写真)。実は以前から両社は提携関係にあり、すでに三菱は日産傘下に入る交渉が続いていたとされる。日産が三菱の不正を指摘できたのも、特殊な関係にあった相手側だったからだとも思われ、巨大な偽装工作などの告発が行われる場合の難しさを垣間見る思いである。
なお、昨日スズキ自動車も測定方法に不正があったことが発表された。