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2020年06月の記事は以下のとおりです。

新型コロナウイルス感染者の発生とその拡散を解き明かすはずの公式データが、いつまでたっても私をすっきりさせてくれない

  • 2020/06/22 15:33

 私はこのブログの場を借りて、3月2日から5度までも主として東京都のホームページに公開されるPCR検査結果のデータを用いて、分かることや分からないことについて時には細かく、時には大雑把な解釈を表現してきた。しかし、多くの医療関係者や、統計処理をおなってこられた方々の努力にもかかわらず、ますますそのデータの意味するところがよく理解できないと口を酸っぱくして言わせていただいてきた。
 そんな分かりにくさの原因のいくつかは少しずつ改善され、データがより詳しくグラフなどで表示されるなどによって私たちにわかりやすくなってはきた。そのための努力か、現在の都のホームページにはグラフの数はなんと8つもある(https://stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp/ )。もっとも単純なのは新しく発生した新規患者の数で、それ以外はすべてもう少し複雑に数値を計算処理して表示されているものばかりで、その中で最も簡単なものは新規患者の陽性率であろう。陽性率そのものは簡単な計算で出るわけだが、私にとってわからなかったのは、新規患者発生数とその時に検査対象とされた検査数がどう対応するかであった。それが全く読めなかったのである。しかし、最近陽性率として表示されるようになったということは、検査対象数とその結果の陽性者数と陰性者数がきっちりと対応させてくれたということだと理解できる。つまり、この陽性率を出してくれて初めて、それまで理解できなかった検査数が意味を持ってくることになり、どの日の新規患者(感染)数とどの日の検査数がどう対応するかということについては、データを見る側は詮索しなくてよいということになる。
 これはありがたいことではあるが、これですべてが分かりやすくなったわけではない。実は、最初から疑問符が付いたままになっていたが、私があえて問題にしてこなかったこと、つまりどんな検査対象であったかの問題がやっと顔をのぞかせてきた。つまり、何の特別な理由もなく検査対象を選んで検査をしているのか、あるいは特別な理由を付けて検査対象を選んで検査してきたのかの問題である。当初は検査能力に限界があるために、あるいは医療提供体制破壊を起こさないために発熱などや肺炎などの前兆が明らかである人を対象に厳選して検査してきたのは周知のことで、これによって感染初期の多くの検査希望者を排除してきたことはよく知られている。
 最初のグラフの写真をご覧になるとおおよそのことはわかるが、ごく最近の陽性率は2%前後で低い。確かに4月5月の最初の感染のピークにおいてはそれ以上に高く、30%を超えていたこともある。しかしそれでも低い時でも70%は陰性で、当時医師の厳密な判断によって対象者が選別されていたことを考えるとこの高い陰性率はいったい何を意味しているのだろうか。つまり、このPCR検査はそれほど感度の悪い信頼性の低い検査法であることを示しているのか、あるいは実はこの検査は新規感染者を発見するための検査ではなく、すでに陽性が確認され手入院している患者さんの治癒過程の検査のデータまでここに入っているためなのであろうか。要するに、ここにきて検査対象者の内容、あるいは質が問題にされなければならないことを意味している。
 ここで二つ目のグラフの写真を見ていただきたい。緊急事態宣言が解除される直前の5月25日以前に東京都では感染が下火になって23日には最低の2人にまで低下してやっと大きなヤマを越したと一瞬安堵したことがあった。しかし、その後じりじりも陽性者数が増加に転じ、現在30人以上は4日連続となっている。またその前々日の6月14日には47人、15日には48人の感染者が発見されており、この1週間ほどは高い感染者数で推移している。このような急激な上昇に際して小池東京都知事は会見で、都として最も感染拡大の源として危惧しているのは新宿などの接待を伴う夜の街の存在であり、新宿区長などの粘り強い説得で、夜の街の関係者に積極的にPCR検査をお願いしてきた。その成果が表れて新しい感染者の発見につながっていると述べた。確かにそのことが順調に新しい感染者の発見につながれば、新たな感染の大きなピーク、第二波発生の抑制につながることに大きな期待を持たせることになる。
 結局のところ、日々発表される新規感染者数は、それを聞かされた我々としてそれをどう評価するかが問題になる。その評価の基本となるデータは、日々発表される新規感染者数だけではほとんど何も意味ある評価を下すことができないのが現実である。かって新規感染者数だけではだめで、そのもととなる検査対象者数が伴わなければどうにもならないと議論されてきたのと同様に、今度はその検査対象者がどのような構成になっているのかが明らかにされなければ、それから発見された新規感染者数は意味ある数字として議論の対象とすることはむつかしい、ということを意味する。
 東京都のホームページに毎日発表される新型コロナの感染動向は、一部の専門家に対することはもちろん、多くの都民や全国の国民に対して開かれた、そして意味あるデータとして表示されなければならない。ということは、発表されるデータの背景、すなわち、どのような背景を持つ対象者を検査しているのか、たとえば、まったく忖度のない一般大衆を対象にしているのか、あるいは今回発表されたように新宿・夜の街関係者を多く含んでいるのか、あるいはそのような可能性のありそうな対象をどの程度含んでいるのかなどのデータが付与されていなければ有効なデータと考えることはむつかしいと思われる。

 私もそのようなデータの背景が的確に表示・提供されるまでは、この東京都のホームページのデータをこのブログでの議論の対象とすることを避けようと思う。そのようなことがないように、貴重で意味あるデータを私たち国民に提供してくださることを心から期待している。

追記:
 6月24日の感染者は55人であった。夜の街関連、あるいはこれまで確認されている感染者の濃厚接触者がかなり含まれているようであるが、詳細は不明である(6月25日)。

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