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2020年09月の記事は以下のとおりです。

安倍首相退陣の引き金を引いたのは、自らが招いた国民の不信感だ!

  • 2020/09/23 21:36

 2020年9月14日、安倍首相の辞任表明に基づいて菅義偉官房長官が後任の総裁に選任された。そして16日安倍内閣は総辞職し、菅内閣が発足した(写真は読売新聞9月16、17日朝刊)。

 この数か月安倍首相の体調不良がささやかれながら事態は膠着状態であったが、あっという間に持病でもあった潰瘍性大腸炎の再発(悪化)という理由で辞職に至った。歴代最長の総理大臣としての安倍首相であったが、このコロナ禍における何がこのあっけない幕切れを演出したのであろうか。
 この7年8か月の長期政権の中でもっとも私にとって衝撃的であったのが、それまで認めてこなかった集団的自衛権の行使を閣議決定で認めるという禁じ手を使い、あわせて安全保障関連法として2015年9月に強行採決して新たな日米同盟への道を切り開くことになった( https://www.nhk.or.jp/politics/articles/feature/27208.html )。これは、核ミサイルを発射する能力を備え、切れ目なくミサイルを発射し続ける北朝鮮や、南シナ海に軍事的基地を求めて進出し、巨大な軍事国家を建設しつつある中国の存在が目を引くこともあって、国民の圧倒的な反対の下での政府の行動であったとは容易には言えない状況であった。しかし、これまでの日本の専守防衛の方向性を安易に変更しようとした試みは、世論調査において国民の過半数が反対に回るという大きな政治不信を招いたことは否定できない。
 そんなさなか、安倍長期政権に公私混同や集中力の不足、あるいは全く不適切な閣僚人事が頻発して大きな政治問題が勃発した。例を挙げれば、首相あるいはその関係者が関係する森友学園問題、加計学園問題、海外派遣の自衛隊における文書管理の問題、あるいは「桜を見る会」などの明らかに不可解な問題が頻発した。そして、中央官僚などが関与した文書改竄などあってはならない問題が発覚し、それらに関与させられた官僚の自殺を呼び起こしたという悲劇も発生した。このような政治不信の元凶となるような数々の問題が発生したが、これらの問題は国会での追及にもかかわらずまっとうな解決が図られたというには程遠い状況にあるといってよいであろう。だれも責任を取ってはいないのである。

 このような状況の中で発生したのが新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的流行)である。世界的には2019年11月あたりから中国で発生し、国内では2020年2月くらいから問題になり始め、その後感染拡大・収束を繰り返して現在に至っている。近年、日本は隣国の中国や韓国と異なり今回の新型コロナウイルスのようなウイルスに対する感染経験(SARS、MERS)に乏しいこともあって様々な不手際が際立った。特に感染の有無を検査するPCR(Polymerase chain reaction)検査体制の不十分さである。つまり、当初厚労省はPCR検査を受ける条件を厳密に定めていた。しかし、その条件を満たしていても、しかもどれほど苦しい不安な思いをしていても容易に検査を受けることができない人たちが沢山出てきてしまったのです。しかも、極めて厳格な受診資格を敷いた理由が長い間知らされず、私はもちろん多くのメディア関係者ですら想像力をたくましくするしかなかったのである。その後それは検査能力の問題であるのはもちろんであるが、意外といえば意外だが、関係者の言葉尻などから医療体制の崩壊を避けるためだったらしいとして大きな不信感を私たちに与えた。このことは政府は我々国民に正確な情報を与えず、感染しても入院・治療も許さずに放置することをあからさまに示したことになった。これは当然のことながら強烈な反感を安倍政権に与えたことは当たり前であった。
 これに輪をかけたのは安倍首相が突如4月1日に国民一人一人に二枚ずつ、当時大いに不足だったガーゼのマスクを無償供与すると発表したことであった。しかし、その予算規模466億円を聞いて我々はあっけにとられたのである。おまけに、そのマスクの配布が遅々として進まず、さらに配布されたマスクに不良品が数多く発見されるに及んで、まったくの不評で税金の無駄遣いと揶揄されるに至った。
 その後、感染が拡大したため、政府・自治体は様々な紆余曲折を繰り返しながら特措法第32条第1項の規定に基づく新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を4月7日に発動(発出)した。対象は東京都を含む7都府県で期限は5月6日までとし、その後4月16日に全国に拡大、5月4日には期間を5月31にまで延長した。その後、感染の様子が収束に向かいつつあることを考え地域を二度にわたって変更し、25日には最後まで残った東京都・北海道を含む5都道府県の解除を宣言した。この緊急事態宣言についても宣言の遅さなどをめぐって議論が絶えず、またこの間、私もこれまでのブログで問題にしてきたPCR検査能力の拡大が関係者が宣言するほど増えず、隣国の韓国や中国、あるいは西欧諸国に比べて圧倒的に低く、例えば特別給付金の決定やその給付にまつわるドタバタ劇など感染症に対する対応の遅れ、迷走は目を覆うばかりとなり、感染を恐れる多くの国民の強い反発を招くばかりであった。そして8月の世論調査の結果は、どの調査でもほとんど同じであったが、内閣支持率は32%、内閣の新型コロナ対策を支持しないとする国民は60%に達し、内閣の命運は風前の灯火となった。

 そんな中、安倍首相の体調不良説が現実味を帯び、ついに8月28日持病の潰瘍性大腸炎の悪化を理由に辞任することを発表した。潰瘍性大腸炎は難病に指定されている病気で、ストレスが悪化の大きな原因となるといわれている。確定的なことはなにも言えないが、安倍内閣の森友学園問題をはじめとする様々な不祥事や今年になってからの世界的な感染症への対策に苦慮し、国民から抜き差しならないほどの不満を浴びることになった。それが病気の悪化に拍車をかけたことは申すまでもないであろう。
 そうであればあるほど、次期自民党総裁の決定は国民に納得のいくようなやり方が要請されてしかるべきだったと思われる。しかし、ふたを開けてみれば何とも言えない小細工のオンパレードでしかなかった。安倍首相が辞任発表の席で、次期首相が決まるまでは職にとどまると表明したにもかかわらず、そんなことは忘れて、一刻の猶予も許されないと称して、地方の自民党員の投票権も満足に生かされない派閥政治の暗闇を見せつけてくれた。その辞任発表からの次期総裁決定への流れはあまりにばかばかしくて語るに落ちたというしかない。現時点では自民党総裁の座は日本という国の首相であり、国を代表する立場である。
 安倍首相の立場が追い詰められたのは新型コロナウイルスへの対応のまずさだけではなく、それまでに首相の座を脅かしてきた森友、加計、桜などの問題でみられた国民への説明の不十分さや隠ぺい体質、そしてその結果としての国民の政治への信頼感の喪失が根本にあったことは否めない。森友学園問題では、それに巻き込まれた公務員の一人が自殺するに及んだ。そのようなことがあってもこれまで首相をはじめ安倍内閣は何の責任も取っては来なかったと私は思う。今回、安倍内閣の官房長官を永年勤め上げ、たたき上げの政治家と言われる菅氏が自民党議員総会で圧倒的な賛成票を得て総裁に選ばれた。その過程では、あまり票を取りすぎては良くないとか、石破おろしとも称して岸田氏に”施し票”を回すなどという陳腐なことが公然と語られるなど、これが一国の総理大臣を選ぶ選挙かといぶかしく思った。なんともばかばかしい。それにくらべて一年をかけて大統領を選ぶアメリカの選挙は、とんでもない選挙戦を行いつつあるが、それでもその真剣さと透明度の高さは評価されるべき点が多々あるように思う。今の自民党のような選挙や個々の政策遂行を行なっていれば、いずれ国民からこれまで同様に信頼を失って政権を失い野党へと放り出される時が来ると言わざるを得ない。

 9月16日に菅内閣が発足した。しかし何度でも言いたいが、その選出過程は真っ暗闇で、いやある意味では分かりすぎてはいるが、どのように自民党党員の意思を集約しているのかは全く不透明で、国民に対する透明性は全くゼロである。例えば、年会費四千円を支払う全国の自民党員すべてに投票権を行使させる時間は十分にあったように思われるが、”一刻の猶予も許されない”との一言でそれも封じた。それほど切迫している新型コロナの状況であるなら、それについてもっと敏速で果敢な政策がそれまでにあっても良かったのではないか。野党の要求があっても国会さえ開催しなかったのである。今回の総理選出の茶番劇は、地方票に強いある候補者を葬るためだったとされる。そうなることは分かっているはずで、それを打ち破る何かの方策もありえたのではないかと思うが、何度も同じことを繰り返しているように思う。
 9月19-20日に行われた読売新聞の世論調査によれば、菅内閣の支持率は歴代三位の74%だった。新型コロナ対策でその脆弱ぶりが目に余ったデジタル化の貧弱さの克服、今回のコロナ禍においてもPCR検査の拡大を妨げてきた縦割り行政の打破などなど思い切った目標を掲げたこともあってか高い支持率を得た。しかし、菅内閣の新しさと期待感で高い支持率でスタートはしたが、総裁選の時の派閥政治のようなことをやっていると国民の政治不信が高まっていることでもあり、それを増幅することは間違いない。初心を忘れずにやっていただきたい。私から見れば、今の政策のネタとそれを克服しようとする政策は、自民党政権が自分たちで切り盛りしている、昔よく聞いた「マッチポンプ」という言葉に尽きるであろう。

追伸:それにしても、いつまでこんな状態なんだろうかといささか腹が立つ。実はいまYahooのネットニュースを見ていた( https://news.yahoo.co.jp/articles/09678563af06b6b3e35c44b367428d82e2b0f1ed

 )。そのニュース記事には「東京都によると、23日に都が確認した新型コロナウイルスの感染者は59人だった。3日連続で100人を下回った。(中略)60人を下回るのは6月30日以来となる。都が公表する感染者はおおむね3日前の検査が反映されるため、連休中に検査数が減ったことが影響しているとみられる」とある。新規感染者の数を公表されたとしても、検査数が公表されなければどうにも評価できない、ただの数字だということはこれまで何度も言ってきたし、散々様々な形で批判されてきたことである。3日前の検査数すら公表できないほどのデータの信頼性の無さとはなんと情けない行政なのであるか!!!

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