ベーブ・ルースからおよそ100年の遥かなる旅路、大谷翔平の偉業ー同じ時代に生きて楽しめて幸せだった!!!
- 2021/11/26 10:22
この年,2021年のアメリカ野球界(MLB)が起こした偉業は驚くべき、ただ驚異と言うしかない一年だったと私は思う。シーズンが進むにつれ、米国メディアはかっての英雄ベーブ・ルースの業績と比較することに躍起になっていたが、時代が全く変わり野球の技術・レベルが全然比較にならないことは徐々に野球界全体に認識されつつあった。そして、オールスターゲームの開催にあたって、バッターとピッチャーの二刀流選手(two-way player)の登録・出場を可能にし、新しい時代に生み出された新しいタイプの野球選手の誕生を正当に評価するに至った。
その決定的な認識の変化は、選手への最大の評価基準である最優秀選手賞(MVP)の評価に表現されることになった。それによれば、全米野球記者協会に所属している記者のうち30名による投票結果にものの見事に表現された。すべての記者投票は、アメリカン・リーグの最高殊勲選手にエンゼルスの”大谷翔平”選手を選んだのである。いわゆる”満票”による選出であった。満票であったという事実は、すべての記者は二刀流選手を正当に評価したという証しであろう。
さて、彼が達成した二つの記録だけをここに書いておくと、ホームランは46本、投手成績は9勝2敗で、どちらの成績も普通の選手一人ででも達成することはそう簡単ではないことは明白である。 彼の成績はこれのみではなく、快足を飛ばしての長打率も高く、盗塁も群を抜く。シーズン当初から”大谷翔平は地球人ではない、宇宙人に違いない”との報道が世界中をにぎわしたのである。そんなことからシーズン中盤からはベーブ・ルースと比較する報道は徐々に姿を消し、まったく新しい二刀流選手として認識されるようになり、そして最終的に満票による最高殊勲選手賞に輝くことになったのである。現在までに10種類の賞を受賞しており、ただただ驚く以外にない。
その結果は11月19日(日本時間)に発表され、その反響は号外をはじめとして日本の国中を大騒ぎさせた一大事であった。それを伝えた読売新聞の19日と20日の内3枚の記事の一部を借りしてお伝えしたい。これらの内容は今年一年たびたび報道されてきており、すでに周知のことであるが、あらためてMVP決定を歓迎してここにその読売新聞の3枚の写真を掲載させていただく。その記事の中には数々の記録が書き込まれているので、興味のある方は拡大してご覧いただきたいが、見出しだけご覧いただくのもうれしい。
それにしても、大谷翔平がこれほどの偉業をいかにして達成したかは大きな謎ではあるが、そのひとつの興味深い彼のアプローチを示すものがあるのでそれをここに記載しておきたい。それは目標達成シート(マンダラシート)と呼ばれ、人事用語集「カオナビ」に詳しく書かれている。その4枚目の写真には大谷翔平の書いたものが分かりやすく表現されている(https://www.kaonavi.jp/dictionary/otanishohei_mokuhyosetteisheet/ )。そして、彼自身が書いたものの画像が5枚目の写真である(https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2013/02/02/gazo/G20130202005109500.html )。
彼は岩手県花巻東高校の野球部佐々木監督と相談しながらこのシートを作成したと言われる。その中心には当時の最大の目的である「ドラ1 8球団」(8球団によるドラフト1位指名)を設定し、その周り8つのマスには最終目標の「ドラ1 8球団」を達成すべく8つの目標を書き込んでいた。その8つとは、左上から右回りに、体づくり、コントロール、キレ、スピード 160km/h、変化球、運、人間性そして最後にメンタルと書き込んである。そしてその9つのマスでできたフレームの周りには同じ9つのマスでできた8つのマスが置かれている。例えば中心の”コントロール”の上の8つのマスには、右回りに、インステップ改善、体幹強化、軸をぶらさない、不安をなくす、メンタルコントロールをする、体を開かない、下肢のコントロール、そしてリリースポイントの安定、と設定されている。こうして残り7つの目標(この場合は目的)に対してそれぞれ8つの目標を設定する、つまり最大の目的「ドラ1 8球団」に対して9x9=81の目標を持って自らを鍛えてゆくというトレーニングメニューを動かしていたのである。つまり、トレーニング項目を視える化してイメージを高めて実践しようというやり方で、これを高校1年時から実践してきたのである。この81の目標の中には、メンタル、人間性、運などというフィジカル面以外も含まれており、彼がメジャーの試合でそれとなくゴミ拾いをする振る舞いなどの基本がこの時代からのものであることに驚かされる。
この周到に計画されたトレーニングメニューこそが彼が押し付けられたトレーニングではなく、自ら納得の上で、トレーニングの目標を常に意識しながらトレーニングを二刀流選手というさらに大きな目的に向けて生かし続けてきたように思う。そのような大谷翔平という人間を生かしてきた東北という風土、彼を取り巻く人間模様、特にプロに入ってから彼を生かし続けた北海道日本ハムという球団、そしてその中で的確に彼を育てるプログラムを組んできた栗山監督をはじめとしたスタッフ、さらに彼を早めにMLBに送った勇気に感謝したい気分である。もちろん、彼の目指す方向を生かし続けたロサンゼルス・エンジェルスと言う球団・監督の貢献はとてつもなく大きいものと考えられる。これからもできるならば怪我をせずに長く元気で二刀流の選手であり続けてくれることを祈っている。
なお、今回大谷翔平の二刀流選手出現を考えてみると、それはきっと様々な現代の問題と関連しているようにも思えてくる。近いうちにそのことについても少し考えてみたい。
追記:MLBに加えてNPBも私にとって楽しい。前年最下位の二つのチームが鎬を削るシリーズを戦う姿は、老舗と言われる情けないチーム同士が情けない、ありきたりの試合を繰り返すよりもはるかに新鮮で、見ごたえがある。来年にも期待したい。野球少年として育った私には、なんとも言えない良い年だった。