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軍用機の飛び交う空の下 (3)安倍政権は信頼に値するか

  • 2015/07/08 18:30

 すでに書いたように私が引っ越してきた地域は、騒音被害という問題のほかに、首都圏ということに加えて軍事的にも自衛隊と米軍の司令部中枢が集結していることから複雑な問題を抱えるところでもある。こんな状況下に生きる私としては、“積極的平和主義”なる題目を掲げながら、しかし何をしようとしているのか疑問だらけの安倍政権の振る舞いに大きな疑いをさしはさまざるを得ない。
 最近の政権内でのゴタゴタは相変わらず傲慢な議員の多さと政策内容の不確かさ、さらにはその支援体制の異質さを表しているようである。写真の記事は7月に入ってからの安倍政権に対する毎日新聞による支持率調査の結果である。もともと異常な高さであった支持率は徐々に低下し、ついに今回の調査では支持率と不支持率が逆転してしまった。
 もとはと言えば今回の安保法制の中心は、長年にわたって自民党がもくろんできた憲法9条の改変の代わりとして憲法解釈の変更による集団的自衛権の持ち出しであり、それを可能にするために巨大中国の台頭とその膨張政策、そして不安定な朝鮮半島の状況をてこに使ったものである。さらにイスラム国の問題もある。このような状況の中では集団的自衛権の行使ができるようにしなければ国民を守れない、という脅しを使っての国会運営である。しかし、それにもかかわらず今回の世論調査で示された民意は、あの戦争を「侵略戦争」とも言わず、世界に戦場を広げようとひた走るこの政権は信用できないとの意思表示と受け取れる。
 現在の日中関係にしても、度重なる不用意な、相手のことを考えない靖国神社参拝、あるいは尖閣諸島の国有化を引き金にして悪化させてきた。また、世界的に見て現在の混乱の一つは、誤った大量破壊兵器存在の情報を基にしたアメリカ軍のイラクへの介入が引き起こしたと言ってもよいであろう。かって中近東は日本が独自の外交を展開してきた結果、我が国に対する信頼は相対的に非常に高かったというのが一般的な評価であった。しかし、小泉政権のブッシュ政権に追随してのイラク戦争への加担は、そんな信頼関係を崩壊に導き、その結果、暗躍するテロ集団やイスラム国の台頭とともに日本が彼らの攻撃の対象になったことは周知のとおりである。それがアルジェリアにおけるテロ集団による精油プラントの襲撃を、そしてイスラム国による2人の誘拐・殺戮を生んだ。
 かって無謀な太平洋戦争を引き起こし、その事後処理がきちんと行えない国にいったい何を期待するのであろうか。外交力が問われるであろう。日本と同様に世界大戦を引き起こしたドイツと侵略されたフランスとの戦後の関係と比較して、日本はなんと貧しい関係しか中国と朝鮮半島との間に取り結べなかったのであろうか。昨日夕刊を見て驚いた(2枚目の写真)。アメリカとあのベトナムとの仲直りである。ベトナム戦争は1975年に終結した。太平洋戦争は1945年、30年以上も前に終わったはずである。それにもかかわらず今のありさまはどうゆうことなのであろうか。
 先ほどイスラム国による2人の日本人の殺害を書いた。その遺体はどうなったのであろうか?そのことについては何も明らかにされてはいない。また、ひとつ前に書いたブログ「軍用機の飛び交う空の下(2)神奈川は沖縄に次ぐ基地県」(http://unique-runner.com/blog/index.php/view/235 )の3枚目の写真の記事の左側に次のような内容が書かれている。激戦の小さな島硫黄島での日本兵の死者は約21,900、米兵の死者は約6,800、米兵の死者の遺骨はすべて国に帰ったが、日本兵の遺骨はこの4月現在、まだ11,540人分が収容されていないと。ジャングルで発見が難しい東南アジアや西太平洋諸島での収容よりは比較的易しいとも思われる硫黄島でのこの事実から考えると、何とも厳しい今後の状況が浮かんでくる。
 靖国神社参拝を声高に繰り返す国会議員の方々は口々に“英霊”だの“御霊”などとおっしゃる。やるべきことをきちんとやってからそう言っていただきたいものである。
 最近、シドニー・ポラック最後の監督作品の「ザ・インタープリター」(原題 The Interpreter 2005)という映画を観た。アフリカの小国の大統領暗殺計画の情報を聞いてしまった国連女性通訳(ニコール・キッドマン)と捜査官(ショーン・ペン)の息づまるサスペンス映画である。その女性はアフリカでの虐殺に銃で戦ってはみたがそれに絶望して言葉の道を選んだのである。彼女の心を述べた次の言葉が印象的であった。「言葉の力と献身だけがこの世をよくすると信じて 効果は銃より遅いけど」、この後にきっと「それが本当の平和だと信じて」と言いたかったのであろう。

追記:
 昨日の報道によれば、毎日新聞に続いて朝日新聞、そしてNHKの世論調査結果は、上に引用した毎日新聞の結果とほぼ同様の支持率逆転であった(2015年7月14日)。

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