エントリー

北京パラリンピック2022は『平和の旗の下に』では終われなかった

  • 2022/03/19 16:44

 国連で決議されたオリンピック・パラリンピック期間中の「休戦協定」はロシアによって破られたが、幸いにもロシアのウクライナ侵略下に行われ続けた北京パラリンピック2022は3月13日に終了した(1枚目の写真、読売新聞3月14日。しかしやはり最後まで厳しい雰囲気の中でゲームは行われた。ロシアによる侵略下にウクライナを脱出したウクライナ選手団はぎりぎり北京に到達したと伝えられてきた。そんな苦境の中に北京にやってきた選手団は、20人の選手で金メダル11個、そして計29個のメダルを獲得する大活躍であった。もちろん、これまでの最高の成績で、いかにこの苦境に耐え忍び、戦火にあえぐ国民への援護射撃を意識した活躍であったのだろうと推測される

 そんなウクライナ選手団の頑張りや日本選手団をはじめとするすべての参加者の活躍とは別に、このパラリンピック中もウクライナに侵攻し続けたロシアとあからさまにロシアを援助したベラルーシュの選手団は、国際パラリンピック委員会(IPC)によって急遽出場を拒否されることになった。これについては様々な意見はあるが、IPC委員会のパーソンズ会長は、ウクライナで交戦している当事国の選手同士がこの大会で戦うのは極めて危険で、大会中の選手間の紛争を避けることは大変難しいとして出場を許さなかった。

 そのような雰囲気での今回の冬季パラリンピックは、最後までスポーツとはなんであるかを問いかけることから離れることは許されなかったのである。それを体現したIPCのパーソンズ会長が、開会式においてウクライナ情勢を念頭に置き、大声で”PEACE”と叫んだのを沢山の方は覚えておられるであろう。しかしそのスピーチの一部は同時通訳されなかったとの問題が発生した(中国中央テレビ、CCTV)。同様のトラブルは閉会式においてもパーソンズ会長のスピーチの一部で発生した。選手らを「平和の闘士」とたたえた部分は全く翻訳しなかったし、ほかの部分でも言葉を言い換えるなどの問題があったという(2枚目の写真、読売新聞3月14日)。

 ロシアは明らかに中国の同盟国である。しかし、だからと言ってなりふり構わず中国がロシアの片棒を担いでいては、世界平和にかかわる様々な局面においてまっとうな対応をして有意義な貢献をするチャンスを失うことになる。それは中国のためばかりではなく、世界のためにならないことは言うまでもない。そのあたりのことをよく考えて振舞っていただきたいものである。
 実は、3月14日にロシア国営の「第一チャンネル」でのニュースの放送中に、「戦争をやめて」、「プロパガンダを信じないで」などと書かれた紙を掲げた女性スタッフがスタジオに表れ、テレビに映る場面があった。女性が「戦争をやめて」と繰り返し叫んだところで画面は別の映像に切り替わり、女性はその場で拘束されたという(3枚目の写真、読売新聞3月15日)。このように国営テレビの中心でこのようなことが起こるのはこれまでなかったことで、我々から見れば衝撃的に見える。最近ロシア国内からは微妙な不協和音が聞こえ始めていると感じている。こうゆう時であるからこそ、ロシアと話の出来る中国などが適切なふるまいをすることが両国にとってはもちろんのこと世界にとっても大切なことのように思われる。多数の人命を奪いながらの勝手なふるまいは許されない。さもなければ、きっとどこかの局面で大きなしっぺ返しに見舞われるはずである。

『覚悟』、そこには新しい未来を切り開く力が潜んでいる

  • 2022/03/17 21:43

 昨年、覚悟を決めてアメリカにわたって4年目になっていたメジャーリーガー大谷翔平が、投手としてはもちろん打者としても驚くべき成績を残してMVPを獲得したのは記憶に新しい(関連写真は2枚目の写真、読売新聞3月15日)。このように才能を極めて高いレベルで異なる二つの方向に発揮することを二刀流と呼ぶが、例えば野球の世界においてそう呼べる人はアメリカではベーブルース、日本では川上哲治、そして関根潤三などが私の頭に浮かぶが、いずれも最終的には打者としての活躍が評価されたように思う。なぜそうなるかは定かではないが、野球が盛んになり多くの若者が活躍するようになり、また各ポジションの特殊性が強調されるようになると、投手や野手として特出した才能を発揮する選手が現れやすくなる。そしてプロ球団としてもそのような選手を活躍させた方がコスト・パフォーマンスが良いと考えるようになったためと思われる。これはいわゆる社会や産業の近代化、あるいは細分化の流れに沿って引き起こされた例で、個人が持つ多彩な才能が必ずしも十分に引き出されるのではなく、逆に優れた才能がどんどん押しつぶされてゆく例と考えても良いのであろう。いまの時代はそうゆう方向に機能していると考えたほうがよいと思われる。

 ひとつ私の記憶に残る例を挙げてみよう。かってアメリカ・スタンフォード大学に当時カレッジフットボールの司令塔のQBとして全米屈指のジョン・エルウェイという選手がいた。彼は確か3年時のアメリカ・メジャーリーグのドラフトでヤンキースから指名されるほどの野球もできる二刀流選手であった(プロでのプレー経験もあった)。しかし彼は最終学年のフットボールリーグのドラフトでコルツに指名されたが拒否し、最終的には駄々をこねてデンバー・ブロンコスに入ることになった。結果としてはそれが彼にとっては成功でいまでもそのチームの重鎮である。でも、もし物理的にプレーできることが可能であったとすれば、十分に二刀流選手として活躍できたかもしれず、私から見れば極めて残念至極であった。

 一枚目の写真をご覧ください、北京パラリンピック2022で活躍した選手の写真である(読売新聞3月14日夕刊)。特に強調されているのは、アルペンスキー女子スーパー複合(座位)で軽快に滑走する村岡桃佳選手やスーパー大回転や滑走で2個の銅メダルを獲得した森井大樹選手である。彼女は5種類のレースに出場して金メダル3個と銀メダル1個を獲得したが、実は昨年の東京2020パラリンピックに出場しており、なんと陸上100m車いす(T54)で6位に入賞していた。村岡選手はこのレースに出場するために厳しい練習に耐え、おおいに体幹を鍛えたようで、それによって雪上での滑走における安定感を獲得したとされ、森井選手の場合も同様らしい。いずれも「二兎を追うもの一兎をも得ず」とのネガティブな言い分に抗して新しい世界を開いたのである。そこには強い覚悟を持って臨んだのであろう。
 村岡選手をはじめとする障害者スポーツ選手のトレーニングの厳しさと多彩なことは枚挙にいとまがない。そのトレーニング効果の科学的解明からは、思いがけない発見が満ち溢れているようで、私たちの身体に潜んでいる可能性をこれまでとは別の角度から導き出せるかもしれないのである。これも新しい二刀流への挑戦からの成果であろう(http://www.unique-runner.com/blog/index.php/view/333 )。

  二枚目の写真が載っている読売新聞の同じページに編集委員の近藤雄二氏がコラム「フリーラン」に「覚悟」のことを書いている。この私の記事もそれの真似である。そこにはいま悲劇的な瞬間を生きているウクライナの国民と、そこから北京パラリンピックにきっと必死の思いで参加したであろう選手たちのことを書いている。いっそのこと、その文章の一部を書いた方が良いと思うようになってきた。以下コピペである。

 「『レースが始まっても家族や親戚のことを考えていた』『金メダルは犠牲になった子供たちとその母、すべてのウクライナ児へのプレゼント』『胸が引き裂かれる思い』『戦争をやめて』 選手たちが残した言葉には、戦火の故郷を案じながら目前の戦いに挑んだ、悲痛な心の『二刀流』の覚悟がにじんだ。その中で同国史上最多の金11個。鋼の気構えに圧倒される。彼らの奮闘が故郷の光となったこと、そして、困難が予想される帰路の無事を、心から祈る」
 彼ら選手団は20名で構成され、メダル29個をえぐりとったのである。これを書いた近藤雄二氏は、このコラムに「ウクライナ選手 鋼の心」とのタイトルを付けていた。

なぜ全くの無駄な死に若者たちや弱者を追い込んでいくのか? プーチン大統領は一体何をしようとしているのか? 彼の主張は我々に理解可能か?

  • 2022/03/09 17:38

ロシア軍はウクライナから出てゆけ、プーチンは引退せよ!

 2022年2月24日に、ロシア軍がウクライナに侵攻したという報道は私を震撼させた(1枚目の写真、2月25日読売新聞から引用)。もちろん、その何か月も前からプーチン大統領が、現在のウクライナの存在はロシアにとって脅威で、ロシアに刃を突き付けている存在であり、それゆえにその存在への攻撃さえ手控えるつもりはないとの強い表現を繰り返していた。当時はウクライナ東部二州のロシア系人民の独立要請に応えてその援助のためと称していつの間にかウクライナ全域への侵略と非軍事化、中立化の要求へと発展していったのである。これは戦争をやる国の常とう手段である。

 確かにソビエト連邦が崩壊し、その弱体化の過程のスキを突かれたロシアが、かってワルシャワ条約機構のメンバーであった多くの同盟国がアメリカをはじめとする西欧諸国による影響下にNATOに加盟する、あるいはそれに近い状態になりつつあったことで、ロシアの喉元に刃を突き刺すようなことになったのである。そのひとつであった大国ウクライナもNATOに加入する可能性まで出てくる状況になっていた。それにプーチンがかみついたのである。

 ロシアがウクライナに侵攻してすでにほぼ2週間である。その矢先に(3月4日)ウクライナに侵攻しているロシア軍はウクライナ南東部のサボリージャ原子力発電所施設を攻撃し、制圧したとされる(読売新聞3月5日朝刊、2枚目の写真)。チェルノブイリ原発事故、そして東日本大地震に伴う大津波による東京電力福島第一原発のメルトダウンという最悪の事故を知る私としては、このウクライナ最大の原発の攻撃を聞いた時には、福島原発事故の時と同様に冷や汗が出てしまった。何故かと言えば、あの時原子炉の冷却が思う通りに進まなければ原子炉は更なる大規模な水素爆発を起こし、さらにはメルトダウンによって生じた大量の放射能物質の拡散は関東平野の広い地域をも汚染し、人々が安全に住むことが難しくなる、つまり首都を放棄しなければならない可能性もあったのである。当時私は関西に住んでいたが、遠くに居ても戦慄を感じざるを得なかったのである。しかし幸いにもまさに紙一重で原子炉の破滅的な大爆発を免れたのである。今回、IAEAはもちろん中国でさえ懸念を表明するほどのロシアの原発攻撃についての報道は真実であると私は信じるが、この出来事は再びプーチン大統領への最大限の不信を倍加することになってしまった。

 しかも、その原発への攻撃からわずか2日しか経っていない3月6日、今度はウクライナ東北部・ハリコフにある国立物理技術研究所を攻撃し破壊したと報じられた。報道によれば、核物質も研究対象であるとされ、油断ならない問題が攻撃によって発生する可能性もあるとされる。なにひとつとってもプーチンを信用する材料ではない。

 以上のようにプーチン大統領を信頼できない理由はいろいろあるが、まだある。いままさに北京冬季パラリンピックが行われているが、それに関連する国連決議まで裏切ったのである。朝日新聞によれば、「国連総会はオリンピックとパラリンピックの期間中に休戦を求める決議を各大会の前年に採択していて、北京大会に向けた決議は、中国やロシアなど173か国が共同提案国になって去年12月に採択されました。今回の決議では、北京オリンピック開幕の7日前にあたる28日から、パラリンピック閉幕の7日後に当たる3月20日までの期間、世界のあらゆる紛争の休戦を呼びかけています」。
 しかし、なんと北京冬季パラリンピック開会式が行われ時には上に記したようにすでにロシアはウクライナに侵攻・攻撃を始めていたのである。そして3枚目、4枚目の写真でもわかるように、開会式での国際パラリンピック委員会(IPC)の会長アンドリュー・パーソンズ氏の強烈な反戦意思の表明には、私も驚かされた(3枚目4枚目の写真、3月5日読売新聞)。その時会長は最後に大声で”PEACE!!!”と叫んだのである。しかし、彼が渾身の反戦意思を表明しているその時、身振り手振りの同時通訳は動いていなかったのである。それほど難しい事態を起こしてしまい、ロシアは世界を、そして盟友であるはずの中国をも裏切ったのである。4枚目の写真を見ればこれまで二度も国連の休戦協定を破っていることが分かる。

 しかし、私たちは冷静でなければならないと思う。悪いのはすべてロシアだとは残念ながら言い切れない。私はキューバ危機のことを頭に浮かべている。1962年10月から11月のことである。当時のケネディ米国大統領がキューバに核ミサイル基地が建設されていることを超高空偵察機のU2で発見するや、ただちにキューバの海上封鎖を強行しソビエト連邦のフルフチョフ第一書記と対峙した。”アメリカ合衆国の裏庭に核ミサイル基地の存在を許さない”という強烈な決意表明であった。いまのウクライナ情勢に瓜二つである。しかし、最終的には両巨頭の手紙のやり取りなどを通じてフルフチョフが折れ、核戦争を回避できた。

 つまり、この場合にはフルフチョフがケネディを見誤り敗北したが、しかし核戦争とは紙一重の瀬戸際であった。また、有名な話で2003年に始まったとされるアメリカとイラクの戦争で大問題が発生した。たしか2011年ころまで続く長期戦であるが、その主たる攻撃の理由はイラクが大量破壊兵器を持っているというCIAによる調査結果の誤りであろう。国連総会でのパウエル国務長官の開戦理由発言は大きな問題となった。後にパウエル氏はそれを最大の誤りと発言することになった。戦争を始めるときには、自国に有利なような間違い、嘘などはしばしば起こることである。今回のロシアのプーチン大統領の発言には私たちが聞いても本当とは思えない、都合よくごまかしていると思えることが少なくないのである。そしてその先には多くの、いや無数の尊い命が無駄にされていることも間違いない。今まさにそのような悲惨なことが行われている。即刻止めていただきたい。ただそう願うばかりである。

 プーチン大統領は核兵器の使用をほのめかしている。かってキューバ危機と言われた時の危機的状況と何が違っているのだろうか? 即刻停戦しかないのだろう。それはロシアやそれを支持する立場の国々はもちろん、その反対側にいるアメリカや西欧諸国も即刻停戦に持ち込むしかない。ウクライナ侵攻を始めたロシアだけではなく、両陣営には途方もなく大きな責任が課せられているのである。

ページ移動

ユーティリティ

<<<2024年11月>>>

1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

過去ログ

Feed