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[完全復元] 鳩山首相施政方針演説と「いのち」、そして新聞報道

  • 2011/09/27 09:44

(この記事のオリジナルは2010年1月31日に書かれたものである)

 2010年1月29日に行われた鳩山首相初の施政方針演説についてマスコミは騒々しい。私が購読している読売新聞は翌日の朝刊で、「『情』アピール鳩山色」、「『いのち』連発 施政演説」、そして「側近二人 作・演出」と報じた。この見出しでの大きな記事がなんと一面の右上にドカンと出されたのである。その内容は、脚本家は元通産省OBで参議院議員の松井孝治官房副長官、演出家は劇作家で内閣官房参与の平田オリザ氏と伝えている。そしてそこに書かれている内容は、「いのちを、守りたい」と始まった演説の中で「いのち」を24回も連発したとか、どのようにしてこの演説内容が作られたか、に焦点が当てられ、「労働なき富」という言葉には野党席から激しいヤジが飛んだと書かれ、首相には危機感がないとまとめられている。
 この記事では、鳩山演説には情緒的な言葉があふれていたと書かれているが、上のような記事はまさに情緒的な反応でしかない。それが一面トップに来るのだから驚く。確かに鳩山首相は情緒的な人間であると言われているようであるし、宇宙人と言われているのは有名である。逆に言えば、彼はこれが持ち味であり、彼のような演説のできる人はこれまでほとんどいなかったことに違和感を感じる人が多い可能性はある。
 むしろ問題は、これまで理念を語る人がいない歴代首相の連続であったことだったのではないか。まずは政治家、特に首相は理念(ビジョン)を語るべきと私は信じている。「理念」があればこそ具体的なことで道を誤っても修正は可能であるが、「理念」なき考えからは修正機能は働かないと考えるのが普通であろう。こう考えると、彼のような人間をしっかりとサポートする体制がきちんと整備されることを期待したい。
 
 実は、上の記事が出たと同じ日の読売新聞に、1月20日に行われた読売新聞、日本経済新聞、朝日新聞の論説責任者による鼎談(ていだん、3人が向かい合って話し合うこと)の抜粋が掲載されていて興味深いものであった(全文はhttp://allatanys.jp/ )。三紙の担当者とも現鳩山政権のこれまでについては様々な批判を持ちつつも、そのニュアンスには大きな違いがあることが読み取れるのである。例えば「コンクリートから人へ」についても、読売が「選挙のキャッチフレーズとしてはいいけれども・・・」と言うのに対し、朝日は「理念としては正しい。これに沿って、大胆に医療や、福祉、環境…投資をやってゆくことがとても大事だ」と語る。
 また、「政治主導、脱官僚、マニフェストの実現」などについては、読売は「政治ショー、あるいはパフォーマンス」だと断じるのに対し、朝日は「有権者との契約であり、基本的には民主主義にはとても大事なことだ。必要なのは鳩山さんの主導性」だと述べている。また日経は、「政治主導、脱官僚というのは当然で、民主主義の大前提だと思う。問題はどう機能させるかだ」、また「もっと官僚をうまく使いこなすことが必要で、政治家は、本来の役割である国家ビジョンを示していく。政治主導は、是非続けて本格的に取り組んでほしい」と述べている。
 その鼎談の最後に朝日の編集責任者は興味深いことを言っている。「景気回復の原動力は経済合理性とかではなく、人間の心理の持ちようであり、政治家と国民がいわば共通の『物語』を持つことが大事だ。そうゆう政治が行われる年になればいいと思う。もう一つ言えば、女性をもっと活用できる日本に是非したい」。新聞の論調というのは面白いものである。しかし、ここで語られるようなことが新聞の見出しに大いに踊るようではまた困るのである。そのような主張は論説でお願いしたい。それ以外は事実のありのままの報道でよい。そしてその評価は読者自身にさせていただきたい。

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