「東日本大震災」 (5 )大量の汚染水と広範囲の環境汚染発生
- 2011/12/21 09:30
このシリーズでは、3月11日の大地震と津波発生、それにつづく福島原発事故の様子を一応時間経過を追って知ることが出来るように、3月12日からの読売新聞一面の写真を連続に掲載している。
前回までに書いたように、とにかく正確に冷却水が必要な場所に入るかどうかはともかく自衛隊ヘリコプターや警視庁機動隊、東京そして後には大阪からの消防隊による昼夜を分かたぬ放水が行われた。その後、新聞の写真でもわかる通り、新たな電源を復旧し、新たなポンプや制御室にも配電され、放水によらない冷却と当時の制御室での出来事が確認できるようになってきた。
しかし、それまでの大量の放水の水は一体どこに行ったのか誰もが不思議に思ったことであるが、それは高濃度の放射性物質に汚染された水として4つの建屋の地下に溜まり続けたのである。そのことは、放射性物質が爆発という現象によって空気中に放出されただけではなく、なんらかの原因、例えば爆発によっておこった圧力容器や格納容器の破損で大量の放射性物質が建屋内に漏れ出し、それが放水された水に溶け、あるいはそれに混じって建屋の地下に大量の汚染水として溜まり続けたのである。
この汚染水は地下のコンクリート壁の割れ目から海へ流れ出していることも発見され、その高い放射能のため緊急の防止策が講じられ、数日中に防止された。その後この高濃度汚染水を除染して廃棄するための巨大な装置がアメリカ、フランスそして後に日本側の企業によって製作され、何度もトラブルに見舞われながらなんとか除染を進めながら地下汚染水を処理しつつある。しかし、結果としてわかってきたことは、大量の地下水が流入しており、放水なくしても大量の汚染水が発生し続ける難題が明らかになってきたのである。現在、除染し溜まり続ける水の処理が問題となっている。東電としては海に流したいのであるが、沿岸漁師は海の汚染につながるとして強硬に反対している。はたして増え続ける処理水はどこに行くのであろうか。
それはともかく、このような汚染は建屋地下の汚染水としてだけではなく、福島第一原発から20-30キロ圏内だけではなく、広く関東一円、また静岡県辺りまで拡大していることが徐々に明らかになってきた。最初は東京都浄水場の汚染として明らかになり、その後牛乳、野菜、そして静岡県では茶葉からも放射能が検出され、どこまで広がるのか懸念されている。秋の収穫時期を迎えた福島県では、当初一定程度のサンプル調査では発見できなかったコメの汚染が山に近い田圃からの収穫米で検出され、広く山が汚染されていることが推定されることとなった。また、原発爆発同時戸外に積みおかれた稲わらを食べさせた牛からも汚染が検出され、食品への汚染チェックが愁眉の急となってきた。
さらに、食品汚染だけではなく、福島から200キロ以上離れた東京近郊でも、爆発で放出された放射性物質が風で運ばれ、雨水によって地上に落ち、それが流れて集まる水路などの場所にかなり高い放射能が検出されることが多くなり、いわゆるホットスポットとして発見され続けている。今後、原発近くの町や村から、さらには都市に至るまで広い範囲で除染が国の責任において行われるようであるが、いまそのための実験的除染が各地で行われつつある。新しい方法の開発が必要であろう。