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熊本の人吉から鹿児島を走り回って420キロ-(6)仙巌園と尚古集成館

  • 2012/09/04 21:45

 南九州の旅の最後は、南九州特に薩摩・大隅半島を800年にわたって統治してきた薩摩藩主の別邸とその事業を眺めることになった。その別邸の庭園は仙巌園(せんがんえん)と呼ばれ、錦江湾を挟んで桜島の反対側の鹿児島市にある。桜島を築山(人口の山)、錦江湾を池とみなして作られたようで、背後にも山があるため錦江湾に沿った細長い庭園になっている。その庭園から桜島を眺めた写真が1枚目の写真である。2枚の写真を合成して作ってある。
 その庭園に入ったところに2枚目の写真に見える巨大な大砲が展示されている。150ポンド大砲と呼ばれるもので、薩摩藩が後に述べる近代的産業国家を目指した集成館事業の推進によって製造が可能になったと言われ、それは見るものを威圧するに十分である。その庭園には巨大な灯篭などを配置しており、見る者を驚かせる(3枚目の写真)。また、歌遊びをしたとされる曲水の庭も作られているが、東北・毛越寺のそれに比べると少し雑なような感じである。しかし、それも後に発掘された部分であるとのことでやむを得ないのかもしれない。
 仙巌園を出るとそれに隣接して「尚古集成館」がある。Wikipediaは次のように言う。「尚古集成館(しょうこしゅうせいかん)は鹿児島県鹿児島市吉野町にある博物館である。薩摩藩第28代当主島津斉彬によって始められた集成館事業の一環として、1923年5月22日に開館した。現在は島津興業によって運営され、島津家に関する史料や薩摩切子、薩摩焼などを展示する。本館は1865年に建てられたもので、国の重要文化財である。仙巌園に隣接する。日本で初めてアーチを採用した石造洋風建築物。」(4枚目の写真。写真を撮影しそこなったのでネットからお借りした。http://www.yado.co.jp/kankou/kagosima/kagosi/syouko/syouko.htm
 また斉彬の目指した方向については「特に製鉄・造船・紡績に力を注ぎ、大砲製造から洋式帆船の建造、武器弾薬から食品製造、ガス灯の実験など幅広い事業を展開した。この当時佐賀藩など日本各地で近代工業化が進められていたが、島津斉彬の集成館事業は軍事力の増大だけではなく、社会インフラの整備など幅広い分野まで広がっている点が他藩と一線を画す。」とし、それは薩摩藩の危機感の表れとしている。
 それについては、その博物館の展示物を見ていると納得できることが多い。包括的な印象を言えば、薩摩という国は日本の中で全く特殊な位置にあったのだと思われる。それは鎖国という時代の制約があっても、琉球を介して中国・東南アジアそして西洋と幅広い交易を営むことができるために、半ばそれは幕府によって黙認されていたといってもよいほどである。そしてそのルートからの情報から、外の世界の慌ただしい変化を詳しく知ってしまうことによって、大いに危機感を感じ、近代産業推進の方向へ大きく舵を切ったといえる。その結果製鉄業の発展を基盤にして蒸気船までも作る能力を獲得し、海軍力を著しく増強し、将来の明治政府の海軍に多くの指導者を送り込んだのである。
 そうは言っても幕府の厳しい制約はあったのであろう。薩摩藩は斉彬の時代に19名の若者を偽名を使ってイギリスやアメリカに送り込んで勉強させたのである。そこからも多くの人材を輩出している。驚くべき先見性である。
 薩摩藩、そして鹿児島を含めた南九州は総じて豊かに発展してきたように思える。しかし、一方で桜島という観光資源でもあるが爆弾でもある難しい問題を抱えている。絶えず小爆発を繰り返し、風向きによってさまざまな方向に火山灰を降らせている。最近では新燃岳のような噴火もある。鹿児島を歩いていて感じるのは、どこでも足もとに火山灰を感じることである。それは我々が普通感じる“灰”というようなものではなく、岩石の細かい粉末の砂でありもっと厄介である(追伸参照)。それでも鹿児島の方々はそれを克服する術を知っていて、それを迎え撃つ覚悟を持っているように見える。
 仙巌園の入り口から少し入ったところに、「克灰袋」という黄色い袋にそんな火山灰を入れた袋の集積所が用意されていた(5枚目の写真)。それは鹿児島市民の意気込みを表す象徴的な表現なのか、実際仙巌園での灰を集めて灰の捨て場に持ってゆく前の一時集積所なのかはわからない。いずれにせよ、その場所には、「かっては『降灰袋』として市民に配られていたが、そんな受け身ではなくそれを克服するという意味を込めて『克灰袋』と名前を変えた」という趣旨の鹿児島市の言葉が添えられていた。“灰には負けぬ”という強い意気込みを感じた。
 そしてその夜、鹿児島中央駅から九州新幹線“みずほ”に乗り、わずか3時間44分で新大阪に戻ってきた。

追伸:このブログを書いた2日後の読売新聞(9月6日夕刊)の「地震・噴火…富士山崩壊」の記事に、火山灰について次のように書かれていた。「マグマが砕けて出来る火山灰は、炭とは全く違い、主成分はガラスと同じだ。目や肺に入ると有害で、屋根に10センチほど積もって水を含むと、住宅を潰すほどの重さになるので被害は甚大となる。」

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