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中国という国家における国内・国外人民の位置

  • 2012/10/03 09:06

 私は既に8月21日にこのサイトで、今回の中国、韓国における領土問題に関する反日運動について私自身の考えを述べた(http://www.unique-runner.com/blog/index.php/view/162 )。それ以降は反日運動は激しさを増し、時には中国各地ではまるで暴動といえる程度まで拡大したが、いまは若干抑制が効いて落ち着いてきてはいる。
 ただ、私にはこのような問題が発生するたびに気になることがある。それは今回のブログのタイトルにもしたことであるが、中国という国における人民が置かれた“位置”である。今回のことに関して言えば、1枚目の記事(読売新聞9月22日)の写真を見ていただければ分かるように、紛争地域である東シナ海や南シナ海に出る漁船に対してかなりの金額が当局から支給されているということで、同様のことは台湾の漁船に対しても巨大企業がスポンサーになっていると言われる。もちろん、漁民ではないが一般市民も同様の“支援”を受けているらしいことは、デモに参加する市民が観光バスのようなもので送り届けられている画像からも想像できる。要するに、新聞記事の見出しにあるように、「漁民」や「市民」は国家の先兵なのである。それは“愛国心”を求める国家からすれば当然のことなのかもしれない。
 しかし、外国に居住する中国人がどう動くかは、それは危うい問題である。例えば2枚目の写真で分かるように、サンフランシスコやニューヨークで華僑による反日デモが起こっている。あるいはしばしばみられる報道であるが、中国・温家宝首相は外国に出向いた時に現地の華僑の集会において中国の主張を述べている。今回の場合にはベルギーのブリュッセルで、あるいは数年前の反日デモの際にはニューヨークの中国人留学生の集会において激しい反日演説を行った。
 つまり中国国外に在住する中国系の人達は、その割合は分からないがかなりの人は中国の主張の代弁者であることは間違いないことらしい。私にはこれが一番気になることである。一般に華僑とは中国国籍で海外に住む中国人を指し、現地の国籍を取っている人を華人というようであるが、私はここではひっくるめて華僑と呼んでいる。
 華僑は欧米列強による中国支配、また日本による中国侵略など外国に翻弄された歴史の裏で多くの中国人が海外に出ざるを得なかった。華僑がどれほど世界に散らばっているかは、その詳細は難しいが、日本には70万人弱で東京では100人に1人は華僑ということになる。アメリカでは350万人と増え続けており、東南アジアは特に比率は高く、インドネシアには130万人以上在住している。ロシアなどは2050年には1000万人になるのではと恐れていると言われる。韓国はその地理的な影響や中韓の問題もあり極めて華僑には厳しい政策をとってきている。現在およそ24,000人ほどしかいないのはきわめて興味深い。その意味で、今回の日中韓の領土問題に関して中国と韓国の外相が共闘を語ったというのは、将来の韓国における華僑の進出という意味で極めて重要な意味を持つと考えるべきであろう。
 私の仕事との関係で思い出すのは、アメリカ国立衛生研究所における規制のことである。これは数年前までのことで今の事情は正確には分からないが、その研究所は増え続ける中国人研究者(留学生も含む)に悩み、研究所内ではアメリカ人が理解できない中国語での会話を禁止したのである。
 このような措置はアメリカの中国に対する警戒感を如実に表しているように思われる。上の新聞記事にもあったように漁民が中国の“先兵”であるとすれば、世界中に華僑や留学生として散らばっている中国人は、やはり有事には先兵として機能すると考えた方がよいのであろうか? そんなことを考えずに中国を含む外国の人たちと交流したいものである。

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