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里山の秋の名物、柿、そして鳥と私

  • 2012/12/08 15:45

 正岡子規の有名な、誰も知らぬものは無い句といえば、

 “柿食へば鐘がなるなり法隆寺”

であろう。秋を語る句で、澄んだ空気と空を連想させるが、もうすぐ寒い冬かと思うと少し物悲しい。でも私は、秋の贅沢品の柿が子供の頃から大好きであった。
 私が生まれたのは朝鮮・仁川であるが育ちは三重県多気郡大台町である(http://www.unique-runner.com/mother.htm )。かっては三瀬谷村と呼ばれ、大台ケ原に源流をもつ宮川と度会郡を流れてきた大内山川が合流するきれいな山村であった。柿はどこにでもあったが、私の家の傍には、子供の目から見て巨木であった盆柿の木があった。細長い小さな柿で、うれしいことにお盆の頃には甘い柿が食べられたのである。それが終わるころには富有柿や平柿、ウスズミ(どんな字を書くか分からない、青くても渋くはなかった)など、いろいろな種類の柿がなっていて、ほとんど食べ放題であった。渋柿もたくさんあり、柿の木になっている渋柿を食べるにはじっと我慢で、“じゅくし”(熟柿、なんて字を書くとははるか後に知るしかなかった)になってとろけるような甘さになるまでがまんであった。でも、それではもったいないので一家そろって渋柿の皮を剥き、軒下に吊るして後のおやつ代わりしたのである。お正月にはいつも“歯がため”と称してそんな干柿(串柿)が重箱に入っていたように覚えている。あぁ、懐かしい!
 ここ数日くるくる変わる天気であるが、素晴らしく晴れた時を狙って我が家の近く、オレンジ色の美しい柿が見られる柿の木が沢山ある所をカメラをもってうろうろしてきた。目的は柿を食べにくる鳥の写真を撮ることであった。昨年までは、もう鳥さえも柿を食べなくなったのかと思うほど柿の木にはたわわに柿がなっていて、赤く熟柿になってもさびしくぶら下がっていると感じていた。だから高槻市に、子供に柿の渋抜きを教える教材にはもってこいだから使ってはどうかと提案したが、残念ながらなしのつぶてであった。
 でも、今年は少し注意して柿の木を見ていたところ、ただ熟しすぎて落ちてしまう柿も多い中、それなりにやはり鳥の御馳走にはなっていることを見ることができたので、今回の柿の木にやってくる鳥の写真撮影となった。
 私が住んでいる高槻の北部にある松が丘から塚脇の辺りには沢山の柿の木がある。鳥も多く、普通民家近くにやってくるのはカラス、ヒヨドリ、ムクドリ、ツグミ、スズメ、メジロ、そして数は少ないがモズなどである。しかし、警戒心の強いホオジロはほとんど姿を見せない。1枚目の写真はスズメである。この時期のスズメは落穂ひろいをやってたらふくお米を食べ、あまり活発に熟柿は食べない。だから、なかなか写真が撮りにくいのである。むかし子供の頃には殺生にも空気銃でスズメを撃って晩御飯のおかずにしたが、胃の中にはお米がいっぱい詰まっているには驚いたことがあった。この写真には集団行動の得意なスズメが電線や、道路の欄干に並んで夕方の寒さをしのいでいる姿もあり、時折柿の木に移動するがあまり喜んでは食べてはいないのである。
 2枚目の写真はムクドリで、雑食性で食欲旺盛である。3枚目はツグミだと思われる。姿かたちはよく似ていて同様に食欲も旺盛であるが、ムクドリは明らかに脚がオレンジ色をしているが、ツグミの脚は黒い。写真ではあまりはっきりしないが、それは確かめてある。
 4枚目は私の好きなメジロである。本当に目の周りが真っ白でかわいい。メジロに愛着があるのは、子供の時に父親がメジロを飼っていて、鳴かせていたからである。良くさえずるオスのメジロを捕るためにしばしば雑木林に一緒に出かけた。どのようにして捕るかといえば、よくさえずるオスを鳥かごに入れて持って行き、それを比較的低木の雑木の間に置き、そのさえずりを聞いて縄張りを守ろうとしてやってきそうな場所に、細い木の枝に鳥餅を巻いたものを2,3本置き、やってきたメジロがそれにとまった瞬間に走って行って捕り抑えるのである。羽根に鳥もちがいっぱいついてしまうが、持っていった灰で鳥もちを丁寧に取り除き、家に持って帰ってから大事に慣らしてゆくのである。
 そんな可愛いメジロの写真が4枚目である(3枚目にもいる)。いかにもうれしそうに食べている姿が可愛い。メジロも集団生活が好きなので、スズメ、ツグミそしてムクドリがいるところによく見かけるようである。その組み写真の中に、名前は分からないがある種の常緑樹の梢にとまっている写真がある。そんな目だった場所にとまるのはかなり珍しいように思うが、偶然それを撮ることができた。鳥の写真はこれまでであるが、残念ながら柿を食べるヒヨドリを撮ることはできなかったし、モズは肉食系なのであまりやってくることはなかった。
 最後の5枚目の写真は、雑食性で何でも食べるが干柿(串柿)が大好きな私のおやつ作りである。昨年から友人に勧められて干柿を作るようになった。干柿用の柿は木になっているという子供時代からの感覚から、そんな渋柿が八百屋さんに売っているということに何ら気が付いていなかったのである。そのことを友人に教わり、大きなスーパーに売っている愛宕などという柿を何度か買い、その皮を丁寧に剥き、ベランダに吊るしている。決して安くはないが、昔を思い出して皮を剥いている。今年は子供たちにもおすそ分けしようと出来上がるのが楽しみである。

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