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[完全復元] 2010年、新春のジムで想うこと

  • 2011/09/23 09:56

(この記事のオリジナルは2010年1月6日に書かれたものである。最後に新たな追記あり)

 右の写真は、私が1999年2月から通っているジムの新春の写真で、国道171号線に面していて私には便利な場所にある。かってはいろいろと不満も言ったが今はそれらの多くは改善され、ジムでのランニングなどを楽しませてもらっている。また、当初からジムに備え付けの計測器で記録していた体重、血圧、心拍数、体脂肪率などのデータは、それぞれの時点での体調を考える上で貴重な資料となっており、私がホームページに書いている様々な書き物の土台になっている(http://www.unique-runner.com/ )。
 さて、私はここにジムの宣伝をしようと書いているのではない。ジムに参加している多くの人達が自然に行う行為にただ感嘆していることを書きたいのである。私はそれをジムの出入り口に近いストレッチを行う場所から見ている。それは男女を問わずで、ジムでの様々な運動を終わってストレッチをした後出口から出て行くのであるが、その時、今まで使わせてもらったジムの中に向かって軽く頭を下げて出て行かれるのである。
 それはきっと楽しませてもらった“場”への感謝の、まったく素直な表現のように見える。私hもそれが出来ればと想いつつ、未だに一度も出来ないのはなぜだろうか。子供の頃、野球部に入っていてグランドで練習するときや試合をするときには、始める前には「お願いします」、終わりには「ありがとうございました」と感謝の言葉を言うのは普通であった。そんなことを言わなくとも、ご飯を食べる前には「いただきます」、終わりには「ごちそうさま」と言っていた。
 我が家の子供たちが小さかった頃には、「いただきます」や「ごちそうさま」の他に、「ご飯粒を残したらお百姓さんに申し訳ないよ」、「お肉もちゃんと食べないと、死んでくれた牛さんや豚さんに申し訳ないんだよ」とよく言っていたことを思い出す。いま子供たちも育っていって2人で食事するとき、「いただきます」とたまに言うだけで、「ごちそうさま」は滅多に言わない。お酒などを飲みながら食べていると、いつ終わったか分からない終わり方であることもあるが、もはや誰にも範を垂れることもない「核家族」になったからかもしれない。
 どうも、大人になってから感謝の言葉らしいことを言っていたのは、情けないが、なんと子供たちに範を垂れるために言っていたような気がする。だから、核家族や1人の大人になった時、私の口からそんな言葉はなかなか出てこないし、感謝を示す行為も自然には出てこない。孤独になってゆくとは恐ろしいことなんだとつくづく思う。私も人との付き合いの中ではしばしば、あるいは頻繁に「ありがとうございます」や「ありがとうございました」と言う。しかし、1人でジムの場から出るとき、それを示す行為は出てこない。
 そうは言っても私は日本人で、八百万の神の世界に生きてきた。なににでも命はあるし、様々なものの恩恵の中に生かされていることも分かる。その意味で一神教の世界に生きてこなかったことに感謝している。私は長い間大学を職場として生きてきた。私はずーと「いわゆる大学の先生のようにはなりたくない」と考えてきたが、「やっぱり世間知らずで、『せんせい、せんせい』と言われているから」と我が家の山の神によく言われたものである。その大学の先生も辞めてもう7年になる。
 また、私たちの心の中から感謝の念が消えてゆく大きな理由のひとつは「拝金主義」とも言われる。お金を払っているのだから当然である、という感覚である。自分を含めてそんな感覚の満ち溢れたこの世界、その経済を議論する「ダボス会議」に参加する全日本仏教会会長の松長有慶(80)は言う。「肉食いたい。金持ちになりたい。欲望は生命力に通じる。全否定するのではなく、他人に役立つよう昇華すればいい」「人間が最も満たされる大きな欲とは、『あなたのお陰です』と語る人が、一人でも二人でも現れることやないですか」(読売新聞2010年1月6日、朝刊「顔」欄)。でも、一体どうしたら、ひとりでいても自然に感謝の振る舞いが出来るようになるのであろうか。(写真は友人の畑野勝義氏のご好意による)

追記:これを書いてから1年半が過ぎた。いまでは一応自然にジムの出口を出るときに挨拶できるようになったし、上の文章を読んでくれた方が私同様に挨拶できるようになったのを知って、うれしい。

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