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北朝鮮の非核化で見え隠れする世界のダブルスタンダード

  • 2018/07/06 13:03

 今冬の平昌冬季五輪の時から朝鮮半島情勢がこれまでと異なる展開を見せ始め、世界のマスメディアはこのことでもちきりである。だから、私は全く書く気もしなかったが、その中での最大の課題である北朝鮮の「非核化」についてあまりにひどいダブルスタンダードで公然と議論されてきていることにほとほと嫌気がさして、私の率直な気持ちを一度簡潔に書いておこうと思って書き始めている。

 この議論の主役は米国トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長で、二人は6月12日シンガポールで史上初の首脳会談を行った。そしてその後署名された共同声明で、北朝鮮が「完全な非核化」に取り組むことが確認された。それを報じた6月13日の読売新聞朝刊の一面の写真がこのブログ1枚目の写真である。
 今回のトップ会談で課題とされたのは、米国が北朝鮮に「安全の保証の提供を約束」する代わりに、北朝鮮は「完全な非核化」すなわち「完全かつ検証可能で、不可逆的な非核化(CVID=Complete, verifiable, irreversible Denuclearization)」を合意することができるかどうかであった。このことについて会談の結果出された共同声明では、「トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与えると約束した」一方で、「金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化に向けた堅固で揺るぎない決意を再確認した」と表現されている(読売新聞6月13日第3面)。要するに、マスメディアを含めて一般にはトランプ大統領の譲歩が目立っているとするのがふつうである。それは、これまでの米国と北朝鮮の合意が何度も破られ、果てしなく難しい交渉で会ったとの経験から、首脳会談に向けて著しく目立った高い目標を設定しなければ始められないジレンマにトランプ大統領が追いつめられていたとも感じられる。したがって、会談が近づくにつれ少しずつ合意のレベルを下げてきた気配を私などは感じていた。それはそれでよいと私などは考えるが、しかしCVIDなどはとんでもなく難しい事業である、あるいは逆に言えばそれをやろうとすれば自分の方に火の粉が降りかかってくることを案じているのではないかと思うほどである。それほど非核化の問題は急務でありながら恐ろしく難しい課題であろう。

 そこに立ちはだかる難題とは、トランプ大統領が言いだしっぺとして北朝鮮の非核化を語るたびにあまりにも身勝手なダブルスタンダードが照らし出されるようになることであり、さらに米国自身や同盟国の「非核化」がくすぶりだすからなのであろう。ちょっと考えてみよう。たまたまであるが、歴史的な米朝首脳会談が行われた1週間後の読売新聞に興味深い記事が出ていた(2枚目の写真)。それは、権威あるスウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)が世界の核軍備に関する報告書を発表したことである。それによれば、今年1月時点の世界の保有核弾頭数は、1万4465発と推計され、このうち約9割を米露が、それ以外の大半も英仏中が占め、残りはインド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮で、いま注目の北朝鮮は10~20発とされる。
 要するに、大きな顔をして核を持ち続けているのは米露英仏中の五か国で、なんということはない国連安全保障理事会常任理事国で、第二次世界大戦の“戦勝国”であり、安保理の拒否権を持っている国々である。まあ、言うなれば自分たちが気に入らないことには"No!"と言えばそれで終わりできる権利を持っている国々である。この五か国以外で核を持つのは、その五か国に反旗を翻したか、あるいはその五か国のどこかに固く同盟国として守られてきた国である。それがどこだとは言わないまでも、いまや核を持つことは公然の秘密であり、北朝鮮のように“非核化”を突きつけられることもない不思議な存在である。こんな話を北朝鮮が非核化の交渉の中で語り始めたとしたら、交渉は終わりになるであろう。その爆弾を北朝鮮は握っており、切り札である。
 私にはこんな戦勝国の身勝手さが許されているなんて信じられないのである。したがって、そんな不条理なことをみすみす見逃しているからこそどこかに非核化を突きつけたとしてもそれがそう簡単にはいかないのである。しかし、今回は北朝鮮が世界から一応袋だたきにあって非核化を強く求められたのは、きっと、北朝鮮が孤立化をいとわずに核大国を目指して核開発を続け、世界、とりわけ五か国の常任理事国が危機感を感じたことに端を発したということなのであろうか。だからと言って、北朝鮮だけに「非核化」をしかも「完全な非核化」を強要することは明白なダブルスタンダードであることは子供でもわかる簡単な話である。だから、ことはそう簡単に進むはずがないのである。当たり前だが、いつの間にか中国やロシアが北朝鮮の後ろに隠れて様々な指図をしているように見える。

 よその国のことばかり言っても始まらない。日本はどうなるんだろうか?日本はかなり前までは非核三原則と称して、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」と広く宣言し、日本の港に寄港する米国船舶は核兵器を持っていないと”信じる”ことになっていた。そして、「核の傘」に入っていることも明確には宣言していなかったと、私などは記憶している。しかしどうだろうか、最近の与党は日本は核の傘に入っていると意味する発言を平然としているように見える。これでは、我が国は「核武装」をしていることとなんら変わらないと考えるのが普通の見方である。これでは、常日ごろから北朝鮮に敵視され、非核化問題に口をはさむなと言われ続けるのも無理なかろうと思ってしまうが。だから、「核の傘からの離脱」を世界に向かって宣言して初めて、唯一の被爆国としての面目が保てるのであろう。

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