エントリー

極寒の平昌で闘うアスリートに、厳しい寒中でも花開く美しい蝋梅の花を贈ろう(2)

  • 2018/02/28 23:24

 アスリートたちの熾烈な闘いを堪能しつつ、これ以上の素晴らしい光景を期待するのはもはや無理だろうと思い始めた矢先に、素晴らしい戦略と圧倒的な集中力、そして諦めない気持ちによる、まさにオリンピックゲームと言うにふさわしい時間を楽しむことができた。

 そのひとつは、スピードスケート女子団体追い抜きパシュートであった。今回の冬季五輪の女子スピードスケートの部門で圧倒的な力を見せ、また前回のソチ五輪で12秒という屈辱的な力の差を見せつけたオランダに対して、今回は如何に戦うべきかを考え抜いた日本チームの真骨頂を見せられるチャンスでもあった。このゲームはよく考えられており、3人が先頭を交代しながらリンクを6周する間に3人は必ず一度は先頭を担当しなければならないことになっており、そして最終ランナーがゴールラインを通過したタイムがそのチームの成績になるというゲームである。したがって3人のうち2人が如何に速いスケーターであろうともそれだけで勝てることにならない点が大変面白く、3人の力のバランスやリレーの呼吸などが大変重要になってくる。この点でこのレースは、夏季五輪の400メートルリレーと共通するものがある。
 このレースで最も大事なことは如何に風圧を回避して疲労を蓄積しないようにするかである。私はマラソンを走るが、強い向かい風が吹く場合には私のような遅いランナーでも大きなランナーの後ろにつくか集団に紛れて風をよけることを試みる。それと同じで如何に風圧を避けるかにポイントがあったようである。それによれば3人は一直線になって走り、前のチームメイトとはできるだけ接近し、腕の振りも脚の出し方も一致させて同じリズムで走ることを目標とし、さらに先頭が後ろに代わるときには最短時間で速度を落とさずに隊列に戻れるように工夫したという。これらのレース運びは完全にデータに裏付けられていて、自信を持ってレースに挑んでいた。結果はすでに皆さんがご承知のように、疲労の蓄積を避ける戦略で動いていた日本チームは、最速ランナーを揃えたオランダチームを終盤に完全に逆転して金メダルに輝いた。それが1枚目の組み写真である(写真の多くはいつものように読売新聞のものであるが、何枚かはネットで公開になっているものを使わせていただいた。ここに感謝する。)。
 もうひとつの驚きは新種目のマススタートであった。高木菜那選手と佐藤選手が出場したが、佐藤選手は予選で転倒走者に巻き込まれて自らも転倒して決勝に進めなかった。決勝に進出した高木選手は、パシュートと同様に大きなオランダ選手の後ろに我慢に我慢を重ねてついて脚力を温存し続けた。そして最後のカーブの出口で大きなオランダ選手がカーブに振られて膨らむのを待っていたかのように小柄な高木選手が内を見事について俊敏にスパートし、完勝した。どこの国の選手がやったとしても手を叩いて祝福するような見事な戦術眼と集中力を示したレースであった。ただ、感心するばかりであった(2枚目の組み写真)。
 最後に紹介するのは、私から見れば大好きなビリヤードに似たカーリングであった。日本チーム(LS北見)は最初の予選から順調に勝ち星を積み上げ、予選終盤に負けが込んで決勝トーナメントへの出場が危ぶまれたが、勝負をあきらめることなく終盤に逆転して決勝トーナメントに出場した。決勝トーナメントの初戦の準決勝では、予選リーグでトップの韓国と対戦した。決してメンバーの調子が良かったわけではなかったが我慢をし続けて終盤に同点に追いつく健闘を見せ相手を追い詰めた。しかし延長に入った最初のエンドで相手スキップの最後の素晴らしい一投に敗れてしまった。それでも銅メダルのかかった英国との3位決定戦では、やはり諦めることなく終盤に追いつき、最後のエンドに追い詰められた英国チームのスキップの最後の一投がミスショットとなって見事な逆転勝ちを収めた。そしてカーリングチームとして初めてのメダルを獲得するとともに、レフェリーのいないゲームの中で対戦相手と印象的で温かい交流を示してくれたのである。北海道の北見市常呂町に育った小さなチームでも、地域と一体になれば大人も子供もひきつけられ、世界に打って出られる見事なスポーツクラブを作り上げることができると、世界中に示した見事な業績だと絶賛したい(3枚目の組み写真)。

 最後に、全力を尽くしながらメダルに手が届かなかったアスリートの写真などを部分的ながら掲載したい。あとわずかでメダルに届かなかったフィギュアの宮原、坂本、そしてプレッシャーに苦しんだ田中選手ら、またスノーボード・女子ビッグエアの若い岩垂選手やパラレル大回転で惜しくもメダルを逃した竹内選手、そして残念ながらわずかの差で決勝トーナメントに進めなかった男子カーリングの面々などにご苦労様と言いたい(4枚目の組み写真)。しかし、それ以外の健闘した多くの日本選手や、外国の選手の皆さんにも厳しい条件の中での力を振り絞っての戦いに敬意を表したいと思う。最後に、そのような多くのアスリートに美しい蝋梅の花の写真を贈りたい(5枚目の組み写真)。

 もう平昌オリンピックは終わってしまった。数々の名勝負を残してくれたが、それでもさまざまな問題点はある。それについてはまたの機会に議論したい。

ページ移動

ユーティリティ

<<<2024年04月>>>

1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

検索

エントリー検索フォーム
キーワード

過去ログ

Feed