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[完全復元] 原子力発電所建設ラッシュでプルトニウムが世界中にばらまかれる

  • 2011/09/30 13:10

(この記事のオリジナルは2010年3月5日に書かれたものである。なお、最後に追記あり)

 写真は3月5日付読売新聞記事の一部である。この記事は、「原発商戦 オール日本で」という大きな見出しの一部として書かれたものである。要するに、原発の製造・運転では三大メーカーを抱える日本がアブダビ首長国からの受注に失敗し、危機感を募らせた政官財が新しい官民受注会社を設立して巻き返しに出ようとの記事である。確かに、世界の原発建設ラッシュを絶好の商機としてそこで売りまくろうとすれば当然の考えであろう。
 でも、本当の問題はそんなところにはないと思う。それは、なぜ今になって原発建設ラッシュなのかということ、なぜ今まで原発建設は抑えられてきたのかということであろう。それは一つには、アメリカスリーマイル島原発や旧ソ連のチェルノブイリ原発の暴発にみられたように、原発制御の難しさである。もうひとつは、原発運転によってできる廃棄物の問題である。山賀進氏のWebサイトの「原子力」の項目には次のように書かれているのでご覧いただきたい(http://www.s-yamaga.jp/kankyo/kankyo-genpatsu-6.htm )。

 「原子力発電所を運転すると、どうしても放射能を持った物質ができる。この中にはプルトニウム239も含まれる。使用済み燃料棒からプルトニウム239や残ったウランを回収し、の頃の放射性物質(いわゆる死の灰)を分離する工程を『再処理』という。日本では2,000年で年間1000トン(累積16,000トン)、2010年には年間1,300トン(累積28,000トン)もの使用済み燃料棒が出ると言う。日本は青森県六ケ所村に大型再処理工場を建設中だが、現在はフランスに頼んでいる。つまり、フランスに使用済み燃料棒を送って、再処理されたものを、再び日本に持ってくる。六ケ所村の再処理工場が完成しても、その処理能力800トン/年なので、日本の原子力発電所からの使用済み核燃料のすべては最処理できない。現在、日本の原子力は『トイレなきマンション』と言われるが、工場が完成しても根本的な解決にはならない。」

 つまり、原発を運転するとどうしようもない廃棄物が出来てしまうことが原発建設を抑制し続けてきたと思われる。その廃棄物は何世代にもわたって放射線を出し続け、その放射能をなしにする方法は原理的に存在しない。いまもその事情に変わりがあるはずはない。それでも建設ラッシュになりそうな理由は、上にあげた新聞記事にあるように「温暖化に関心高まり」、「化石燃料枯渇の懸念」であろうか。この二つは同時に抑えようと思えば抑えられるが、原発から出る廃棄物は抑えようがないものである。したがって、これからは技術的にそして生活習慣の返還などによってエネルギー消費を抑えることであるが、究極的には太陽光、風力、地熱、波力などなどの自然エネルギーによる発電に寄って原発建設を抑えるしかないことになる。それはそれで大変な事業であるが、やればできることである。
 でも、もっと恐ろしいことはほかにもある。それは、ウランの核分裂による発電の結果生成される核廃棄物のプルトニウムである。これは通常は使わないウラン238と混合して再度燃焼できる可能性があり、日本で「高速増殖炉」としてテストされてきたが、極めて危険な加熱融解した金属ナトリウムを使うことで事故が起こりやすく、実用にはまだまだ遠い道のりである。また、プルサーマル発電の材料としても使用可能であるが、ようやく実証稼働の段階である。しかも、このプルトニウムは長崎原爆の材料であることから分かるように原爆に化けること(今では誰でも作れると言われている)、しかもごくごく微量(マイクログラム以下)で肺がんを高頻度で引き起こすことが知られており、それが世界中に拡散した時には取り返しのつかないことが起こりうると考えなければならない。いま計画されているような原発が世界中に建設されたとき、はたしてプルトニウムを世界が管理することができるとは思えない。いまでさえ何もできないのにである。
 先日観た映画「ポセイドン・アドベンチャー2」は、第一作の「ポセイドン・アドベンチャー」の最後の場面で転覆したポセイドン号の船底から数名が救出された後の続き物の映画であるが、、テリー・サヴァラス扮する悪党が秘密裏にその船に積まれていたプルトニウムを奪いにやってくるところから始まっていた。彼が言うには、アメリカではプルトニウムがしばしば紛失しているのだそうである。この映画は1979年の制作である。

追記:なんとこのブログを書いてから371日後、東日本を襲った大地震とそれによる津波の結果、未曾有の震災が発生したが。しかしそれにとどまらず福島第一原子力発電所の原子炉冷却用のすべての電力が失われた結果、3原子炉が大爆発を起こして事実上のメルトダウンとなり、現在もまだ完全に原子炉は冷温停止状態に至っていない。いやそれよりも、メルトダウンによって溶融した核燃料が一体どこにあるのかさえ確定していないことから、本当はどこを計測すれば冷温停止状態を確認できるかさえ分からないのである。多分ここ何年かはわからないのだろうと思われる。(2011年9月30日)

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